遺言を作成するメリットやデメリット

１　遺言はどのようなものか

遺言は、民法という法律において定められている書面です。

遺言を作成しておくことで、自分（遺言者）が亡くなった際に、誰にどのくらい遺産を取得させるかなどを決めておくことができます。

遺言の種類としては、主に自筆証書遺言や公正証書遺言があります。

いずれも形式や手続きが法律で定められており、これらに反すると遺言が無効となってしまうことがあります。

自筆証書遺言は、財産目録を除き、原則として遺言者がすべて自筆で書く必要があり、作成した日付や遺言者の名前を正確に記載し、遺言者の押印もしなければなりません。

公正証書遺言は、基本的には公証役場で公証人を通じて作成する遺言です。

公証人は元裁判官など法律の専門家ですので、法的な不備で遺言が無効になるということは通常ありません。

自筆証書遺言のメリットとしては、費用がかからないこと、自分の家で作れるので時間や場所を選ばないこと、書き直しが容易であることなどが挙げられます。

自筆証書遺言のデメリットとしては、原則として、すべて手書きで書かなければならないため作業量が多くなりやすいこと、形式を間違えると無効になる可能性が高い、保管場所に気を付けないと紛失などの可能性があるという点が挙げられます。

遺言があれば、原則その内容に従って遺産を分けることになるため、相続人同士で遺産の分け方を決める必要がなくなります。

また、遺言書を用いて名義変更などの相続手続きを行うことができるため、相続人の負担を減らすという意味でも遺言を作成するメリットはあります。

相続が発生した際に、被相続人が作成した遺言がある場合には、原則その内容に従って遺産を分け、遺産を取得した相続に人は、それぞれ取得した相続財産である預貯金の解約、不動産の相続登記、株式などの有価証券の名義変更などの相続手続を行うことになります。

しかし自筆証書遺言は、原則として事前に家庭裁判所で検認を行う必要があります。

検認をするためには、家庭裁判所に申立てをし、決められた日時に手続きを行う必要がありますので、時間や手間がかかります。

検認手続きを経た後に、この自筆証書遺言を用いて金融機関や法務局で預金解約や相続登記をすることができます。

この際、金融機関や法務局などで所定の書類等を提出する必要がありますが、検認が必要となる遺言がある場合、家庭裁判所における検認手続きの際に交付される検認済証明書の提出も求められます。

公正証書遺言がある場合は、検認は必要ありません。

また、相続人であれば、公証役場で公正証書遺言の検索ができます。

遺言の内容を実現することを遺言執行といいます。

遺言を執行する人を遺言執行者といい、遺言で指定することができます。

具体的には、遺言執行者は、相続が発生した時に、遺言内容を実現するための各種手続（預金解約、不動産の名義変更等）をします。

遺言に遺言執行者を定めておかなくても、一定の場合を除いては、遺言を執行することができます。

もっとも、相続人間で対立が生じている場合に、遺言書執行者を定めていなかったばかりに、相続人間で誰が遺言を執行するか争いになるケースがあります。

遺言執行者を定めておくことでスムーズな遺言執行を行うことができるので、遺言を作成する際には、遺言執行者を指定することが望ましいといえます。